映画を観て 「海の上のピアニスト」

映画 「海の上のピアニスト」

近所の小さい映画館で、観たいと思っていた「海の上のピアニスト」を上映しているのを知り、さっそく観に行ってきました。コロナの感染がとても増えてきたので、出かける間際に少し躊躇しましたが、行ってみると、会場は10人ほどで、ゆったりと観て来られました。とにかく、時間が長い。あの「ニュー・シネマ・パラダイス」もそうでしたね。

この映画は、その「ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレが監督、曲は、昨年亡くなった映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネ。ストーリーと共にエンニオ・モリコーネの美しいメロディーが大変感動的でした。

1900年、客船の中で生まれ、名前は1900(Nineteen Hundred)。生涯、船の中で過ごします。クラシックピアノをイメージする方もいらっしゃると思いますが、ジャズピアニストの上を超える素晴らしい即興曲を奏でるピアニストのお話でした。ジャズピアニストと対決の演奏をしますが、このNinteen Hundredが勝つのです。最初は「きよしこの夜」をさらりと、二曲目はジャズピアニストの曲のコピー。三曲目で素晴らしい超絶技巧の即興曲を演奏します。私がヤマハで習っていたジャズピアノの先生がこの映画をお勧めされていたのですが、その先生の演奏はやはりこのタイプに近い。なるほど・・とお勧めされた理由がわかりました。

アップテンポの賑やかな曲ばかりではありません。それぞれの人の顔の表情を見て、曲にしてしまう。落ち込んでいる時の曲、美しい少女に見惚れながら弾く美しいメロディー。このピアニストを支えるトランペッターの演奏も素敵です。

その少女に会いたくて、一度は船を下りようとしますが、船に戻ってきます。「ピアノは88鍵。その限界があるから自由な音楽を奏でることができる。陸に下りて広い世界に行くと、限界がないので今のように弾くことができない。」というような意味のことを言っていたのが、私には印象的に残りました。そして、“終わり“というものにこだわり、最後まで船の中にいようとしました。確かに、人は “終わり“というものが見えない方が不安になります。

エンニオ・モリコーネの美しい音楽とピアノの演奏がたくさん聴けます。そして、100年以上も前、あんなにたくさんの人が船でヨーロッパとアメリカを行き来していたのですね。自由の女神やニューヨークのその時代からある高層ビルの風景が何度も出てきます。船に乗っている人たちがそれを見つけて喜ぶシーンも何度も。今、コロナ禍で世界中の人たちの動きが止まっています。私も、もう行けないかもしれないニューヨーク。時代を超えた同じ風景を実際に見てきたことは、この映画の感動の一つでもありました。